個人で営む飲食店の税務調査に立ち会ってきました
1. 律する税理士コラム(近況報告)
今週は、個人で営む飲食店の税務調査に立ち会ってきました。
実は先月、無予告で自宅と店舗に同時に調査官が来て、調査を始めようとしたことがありました。
途中でマスターから不安そうな声で連絡を受け、いったん中止していただき、改めて税理士の立会いのもとで調査を受けることにして、その日はお帰りいただきました。
その後、正式に事前通知を受け、今回の立会いとなりました。
調査はごく一般的なもので、調査官2名が来店し、帳簿に基づいて確認を進めていきました。
特に大きな問題はなさそうで、このままスムーズに終わればと思っています。
調査の過程のヒアリングで、QRコードやタブレットによるセルフオーダーが話題になりました。
コロナ後の補助金を使って高額なタブレットオーダーシステムを導入したものの、設定が細かすぎて、ほとんど使っていないそうです。
設定のサポートを頼むとサポート料を請求され、担当者の対応も気に入らない。解約しようにも手数料がかかるため、そのままにしているとのことでした。
人件費の上昇と人手不足もあり、都内ではQRコードやタブレットのセルフオーダーを導入する飲食店が増えています。
一方で、「接客がおろそかになるのでは」と、まだ抵抗のある経営者も多いのが現実です。
ただ、セルフオーダーを入れたら接客をしない、というわけではありません。お客様の選択肢が増えるということです。接客と注文は分けて考えればよいと思います。
最近の若い方は、店員さんを呼ぶよりもセルフオーダーのほうが心理的な抵抗が少なく、頼みやすいとも聞きます。
先日、ある飲食店の経営者にこの話をして導入をすすめたところ、すぐにQRコードオーダーを導入されました。
その後に話を聞くと、「すごく助かっている。入れて本当によかった」とのことでした。
自分で設定できる経営者なら問題ありませんが、ITに詳しくない経営者にとっては、やはりハードルが高いようです。
オーダーだけでなく、予約の管理に頭を悩ませているという声も、ほかの飲食店経営者からよく聞きます。有料のWebサービスはありますが、使いこなすまでが大変です。
AIをうまく使って、もっと簡単にシステムを設定できないものか。
税理士が会計システムを整える延長で、オーダーや予約のシステムとの連携までサポートできたら、それはそれで価値があるのではないかと考えています。
調査官が帳簿の確認に集中している間、そんなことを考えながらAIとひたすら壁打ちしていたのは、内緒です。
2. 利するニュース(財務・税務・AI)
財務・税務・AIなどの最新トレンドをピックアップします。
税理士が扱うメインテーマとしての税務と付随業務である財務、そして業務と密接に関わるAI・IT関連の情報について、知っておくべき情報を発信していきます。
2-1 インボイス経過措置、免税事業者からの仕入の控除が「8割」から「7割」に——10月1日から:国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス)
(以前もアナウンスしましたが改めて)
インボイスを発行できない免税事業者などからの仕入について、消費税の仕入税額控除を一部認める経過措置の割合が、10月1日から8割から7割に下がりました。
令和8年度の税制改正で、経過措置の期間が延びたうえで、割合が段階的に下がる形に見直されています。
- 令和8年10月〜令和10年9月:7割
- 令和10年10月〜令和12年9月:5割
- 令和12年10月〜令和13年9月:3割
7割と8割のどちらになるかは、請求書の日付ではなく、実際に仕入をした日で決まります。
あわせて、1つの免税事業者からの仕入が年間1億円(税込)を超える部分は、経過措置の対象外になりました(令和8年10月1日以後に開始する課税期間から)。
実務ポイント:
決算期が10月をまたぐ会社は、同じ期の中に8割の期間と7割の期間が混在します。
会計ソフトやレジの税区分が7割に切り替わっているか、ご確認ください。
免税事業者との取引が多い会社は、取引先のインボイス登録状況をあらためて確認しておくと安心です。
2-2 社会保険の「106万円の壁」が撤廃——10月1日から:日本年金機構/厚生労働省
パート・アルバイトの方が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する要件のうち、「月額賃金8.8万円以上」(年収約106万円)の要件が、10月1日に撤廃されました。
今後は、週の所定労働時間が20時間以上かどうかなどで加入を判断します。
なお、従業員数による企業規模の要件は、当面は現行の51人以上のままで、段階的に縮小されます。
- 36人以上:2027年10月から
- 21人以上:2029年10月から
- 11人以上:2032年10月から
- 10人以下:2035年10月から
また、令和8年度の最低賃金は、全国加重平均で1,177円(56円引上げ)。東京都は1,280円(54円引上げ)で、10月1日から発効しています。
発効日は都道府県ごとに異なります。
実務ポイント:
従業員51人以上の会社は、週20時間以上働くパートの方で、これまで賃金要件で加入していなかった方がいないか確認してください。
最低賃金は、時給だけでなく月給の方も時間あたりに換算して下回っていないか、確認が必要です。
2-3 中国に進出している日本企業が2年で2,916社減、過去最少の1万118社に——帝国データバンク調査:ビジネス+IT
帝国データバンクが9月28日に公表した調査によると、2026年6月時点で中国に進出している日本企業は1万118社でした。
2024年の1万3,034社から2,916社(22.4%)減り、2010年の調査開始以来、最も少なくなりました。
ピークだった2012年の1万4,394社と比べると、約3割の減少です。
この2年間で、新たに現地法人や工場、駐在事務所を設けた企業が1,221社あった一方、拠点の閉鎖などによる撤退・所在不明は4,137社と過去最多でした。
業種別では、製造業が4,206社で最多ですが、2年で933社減りました。卸売業も898社減の3,320社です。
地域別では上海市が3,961社で最多ですが、1,085社減っています。
人件費の上昇などを背景に、ベトナムなど東南アジアや日本国内へ拠点を移したり、分散したりする動きもみられるとしています。
実務ポイント:
中国から仕入れている会社や、中国に取引先がある会社は、仕入先や物流の見直しが進んでいないか、取引先の動きを確認しておくと安心です。
一方で、中国の事業者が日本のネット通販に出品する流れは、うちの事務所の実務でも増え続けています。
モノとお金の流れは「撤退」だけでなく、向きを変えて続いています。
海外の拠点を縮小・撤退する場合は、清算の進め方によって税務の扱いが変わります。決める前に一度ご相談ください。
個人的には、これからのフィジカルAI時代、圧倒的に中国のプレゼンスが高まると思っています。
撤退ではなく進出を検討していきたいですね。
3. 利するマッチング(商材・人材・M&A)
このコーナーの案件は、Webの掲示板にまとめています。最新の案件と成約・終了の状況は マッチング掲示板 をご覧ください。
4. 利する相談事例(Q&Aコーナー)
寄せられた相談事例を匿名で紹介し、解決のヒントを共有します。質問・相談は、このメールに返信するだけで届きます。Webの質問箱からも1行で送れます(匿名可・ログイン不要)。
4-1 会計ソフトを一度も開かずに、1年分の記帳を終えました
先日、ある顧問先(不動産賃貸業の法人)の1年分の記帳を、事務所のAI仕組みで仕上げました。
担当者は会計ソフト(マネーフォワード)の画面を一度も開いていません。
ー何をしたか
- 社長から預かったのは、領収書・請求書など343枚と、紙の通帳2冊(13ページ)です。
- 事務所の「証憑ゲートウェイ」で、AIが1枚ずつ読み取り(日付・金額・取引先・税率)。
- 通帳は残高が1円も狂わないか、AIが行ごとに検算しました。
- 次に、記帳AIが科目の案を作り、人が判断するのは迷うものだけにしました。
ルールで決まるもの(タクシー・郵便・書籍など)はまとめて確認
迷うもの(百貨店の買い物が飲食か物販か、など)は選択肢で1つずつ選ぶ人が選択肢で判断したのは約15回。承認したものだけが、証憑の画像付きで会計ソフトに登録されます。
ー結果
- 会計ソフトに入った仕訳:555件(領収書などから332件、通帳から223件)
- AIにかかった費用:約2,900円(仕訳1件あたり約5円)仕組みの不具合で発生したムダ(二重の読み取りなど)を除くと約1,700円、1件あたり約3円でした
- 会計ソフトへの手入力:0件
ーAIだけでは気づけなかったこと、人が止めたこと
効率だけでなく、「間違いを止める仕組み」が大事だと改めて感じました。
- 前期の決算で未払に計上済みの支払が、今期の費用として二重に入りかけていました。
前期末の仕訳と突き合わせて見つけ、登録後に訂正しました。今は「期首の支払は、前期末の未払を見てから起票する」手順にしています。
- 申告が終わった期間の領収書が数枚混ざっていました。もちろん、計上はしませんでした。
- 10万円を超えるパソコンは、消耗品ではなく資産として計上し、決算で少額減価償却の特例を使うか判断します。
- 役員の退職金や社宅など、税務の判断が要るものは、条文・通達で根拠を確認したうえで、社長との決算報告の議題にしました。
AIは「たくさん読む・案を作る」が得意で、人は「決める・止める」に集中できます。
記帳にかかる時間が減った分を、決算前の打ち合わせや、社長との相談の時間に回していきます。
4-2 申告の「受付結果」を、国税も地方税も自動で取り込むように
前号で、国税庁の新しい「e-Tax API」への接続準備をご紹介しました。今週、その仕組みが動き始めました。
国税は、APIの利用許可が下りた当日に本番の接続を確認し、税理士あての受付結果やお知らせを毎晩自動で取得するようにしました。
地方税(eLTAX)も、公開されている仕様の開示を受けて接続し、約180社分の受付結果を数分で照会できるようになりました。
これまでは、申告ソフトの画面から一覧を書き出し、申告の予定表と人の目で突き合わせていました。それが自動で取り込まれ、「申告すべき税目があるのに受付結果がない」ものを機械が洗い出します。
ただし、お知らせPDFを自動で取得できるわけではありません。
記載内容をデータで取得できるので、notionの該当項目に転記するようにしました。
いきなり切り替えるのは怖いので、9月分で、これまでの手作業の一覧と自動取得の結果を突き合わせました。国税・地方税ともに全件・全項目が一致しました。
当面は1〜2か月、従来の方法と並行して差がゼロであることを確かめてから、完全に切り替えます。
毎朝のまとめには、申告書が受け付けられなかった旨の通知があれば、いちばん上に表示するようにしました。
送信したつもりが届いていなかった、という事故を、人の注意力ではなく仕組みで防ぐのがねらいです。
今後の予定納税などの事前通知などにも利用できそうです。
5. 編集後記(食事、睡眠、運動など)
会社の経営数値と社長の健康数値。社長が管理すべき二大数値です。
自分自身の実践も含めて、短く共有していきます。
日々トレーニングを心がけていますが、仕事が立て込むとどうしても体が硬くなってしまいます。
首、肩、腰、お尻、脚などは慢性的に凝り固まります。
ストレッチもなるべくするようにしていますが、なかなか思うようにはいきませんね。
事務所で長時間座りっぱなしなのがよくないのかなと思い、定期的に立ったり歩いたりするようにしています。
当面の目標は、前後・左右の開脚で180度、できるといいですね。
それでは良い週末を。
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