顧問先の取締役会でクラウド会計を提案
1. 律する税理士コラム(近況報告)
先日、顧問先の取締役会に参加する機会がありました。
スタッフが決算の数字を説明したあと、私から経理DXの第一歩として、クラウド会計の導入を提案しました。
その会社は長年レガシー会計ソフトを使っていて、経理のシステムは旧態依然、コストも高く、経理担当の負担が大きいことが長年の課題でした。
クラウド会計に変えると何がどう変わるのかをご説明し、社長を含む役員の皆さんの同意をいただけました。
順次クラウド会計へ移し、あわせて経理まわりのDXを進めていきます。
経理は、会社の中でブラックボックスになりがちです。
経理担当者が毎月何をどうしているのかは、経営者からは意外と見えていません。
どれだけ大変で、どれだけ時間がかかっていて、どこに苦労があるのか。
だからこそ、会計をクラウドに変えると何が変わるのかを、我々のような会計・税務の専門家が分かりやすく説明し、経営に資する形で提案することには意味があると思っています。
クラウド会計の導入は、一義的には会社のためです。
経理を合理化すればコストが下がり、経営数値が早く出て、経営判断に使えるようになります。
こちらの都合を押し付けるものではありません。
ただ、経理が合理化されれば、結果として我々の業務も効率化されます。
会社にとって良いことを提案し、結果として我々も利を得る。その順番が大事だと思っています。
クラウド会計はかつて、便利だけれどセキュリティが不安な「キワモノ」扱いでした。
しかし、いまや各メーカーがクラウドへの移行を表明していて、抗えない流れになっています。
ましてAI時代です。どのメーカーもAIとの親和性をうたい、AI活用を前提とした機能を次々に出してきています。
では、どのメーカーを選ぶのか。
私は現時点で、どこか一社にオールインしないようにしています。
いくつかのクラウド会計を並行して使い、顧問先に応じて使い分けます。
一社に寄せてしまうと、各社とも囲い込みをしているので、そこから抜け出せなくなるからです。
それよりも大事なのは、核となる原始資料を法律に定める電子データに効率的に変換して管理し、適切に会計データに変換することだと考えています。
手元にデータがあれば、どの会計ソフトにも流せます。
そのためには全てをメーカー任せにせず、AIを自分でコントロールする必要があります。
その目的で自社アプリを開発していて、いまのところ順調に育っています。
これまではストリームドやバクラクといった有料ツールを使ってきましたが、自社アプリが軌道に乗れば要らなくなるので、順次解約していく予定です。
まさに「SaaSの死」、ですね。
AIを使い倒せばAIの費用は増えますが、これまで払ってきた有料サービスの費用に比べれば、はるかに割安です。
最近登場したAstraも、さっそく業務に入れています。
本来スタッフに頼んでいた仕事を、AstraやClaudeにどんどん任せているので、スタッフの負担は目に見えて減っていると思います(具体例は今週の事例参照)。
これからも会計ソフトや税務ソフトを触る作業を減らしていきます。
そして、人にしかできない仕事—AIが作った資料をベースに経営者に説明し、経営者の判断に寄り添う仕事—に、より多くの時間を充てていきます。
2. 利するニュース(財務・税務・AI)
財務・税務・AIなどの最新トレンドをピックアップします。
税理士が扱うメインテーマとしての税務と付随業務である財務、そして業務と密接に関わるAI・IT関連の情報について、知っておくべき情報を発信していきます。
2-1 食品の消費税、2027年4月から2年間「1%」へ(日本経済新聞)
政府は9月15日、飲食料品にかかる消費税率を、いまの8%から1%へ引き下げる税制大綱を閣議決定しました。
期間は2027年4月1日からの2年間です。
中・低所得者層には所得に応じた給付を組み合わせ、飲食料品の消費税負担を実質ゼロに近づける方針で、2029年度からは所得に連動した本格的な給付制度の導入を目指すとされています。
消費者から見れば「食品が7%分安くなるかもしれない」という話です。
ただ、事業者から見ると、それほど単純ではありません。
いまは、通常の商品・サービスが10%、飲食料品などが8%の2税率です。
これが一定期間、通常が10%、対象の飲食料品が1%になります。
税率の差がかなり大きくなります。
飲食店、小売店、食品メーカーでは、レジ、POS、請求書、会計ソフト、ECサイトの税率設定を、2027年4月までに変える必要が出てきます。
国税庁にはすでに「消費税率引下げ特設サイト」が設けられ、レジ・システム事業者向けの案内が始まっています。
本則課税への移行、簡易課税、総額表示についても特例を設ける方針とされています。
もう一つ気をつけたいのが「2年間限定」という点です。
予定どおりなら、2029年4月には食品の税率を8%に戻すことになります。
事業者から見れば、8% → 1% → 8% と、2年のあいだにシステムや価格表示を2回変えることになりかねません。
家計の負担が軽くなるという話の裏で、事業者側の事務負担と改修コストが、今後の論点になりそうです。
なお、まだ法律が成立したわけではありません。
今回決まったのは政府の大綱で、これから法案が国会に提出され、審議・成立して初めて実施されます。
実務ポイント:
影響が大きいのは、食品を扱う飲食・小売・EC事業者です。
「2027年4月だからまだ先」と考えず、POSレジ・販売管理・会計ソフトが1%の税率に対応できるのか、早めにメーカーへ確認しておくことをおすすめします。
消費税は税率が変わるだけでなく、インボイス、仕入税額控除、簡易課税と、経理処理の全体に影響します。
制度が固まり次第、このメールでも改めて実務面を取り上げます。
税務の現場では負担、混乱、大迷惑でしかありませんが…
2-2 PwCスイス、コンサルタントの賞与を半減へ——理由の一つはAIの業務利用(TBS NEWS DIG/Bloomberg)
世界4大会計事務所の一つ、PwCのスイス法人が、一部のコンサルタントの賞与を大幅に削減する方針だと報じられました。
理由として挙げられているのが、厳しい経済環境と、AIの業務利用の拡大です。
報道によれば賞与は半減する計画で、人員削減そのものは現時点で検討していないとされています。
なお情報源は匿名の関係者で、PwC自身は人事に関するコメントを控えています。
ここで注目したいのは、「AIによって大量解雇が始まった」という話ではありません。
AIによって同じ仕事がより少ない時間・人数で終わるようになった結果、人の仕事に対する評価と報酬の構造が変わり始めた、という点です。
PwCだけの話でもありません。
報道では、KPMGが英国のアドバイザリー部門で約200人を削減し、マッキンゼー、EY米国法人、PwC米国法人などでも、この1年ほどで管理・事務部門を中心に人員を絞っているとされています。
「AIに仕事を奪われる」より先に起きること。
これまで3時間かかっていた仕事が30分で終わるようになったとき、その仕事自体がすぐになくなるわけではありません。
ただ、会社の側からは「3時間分の人件費を払う必要があるのか」という話が出てきます。
仕事がなくなる前に、仕事の値段が下がる。
最初に起きるのは、たぶんこちらです。
会計・税務の業界も同じです。
領収書の読み取り、会計データの入力、資料のチェック、税務上の論点整理、申告書のレビュー、お客様への説明文の作成。
このあたりは、すでにAIでかなり効率化できます。
3時間かかっていた申告書のチェックが30分で終わるようになれば、生産性は大きく上がります。
同時に「これまでと同じ3時間分の料金をいただけるのか」という問題も出てきます。
逆に、価値が上がる仕事もあります。
何を問題として設定するのか。
AIが出した答えが正しいかを判断すること。
複数の選択肢から、経営者と一緒に決めること。
AIが優秀になるほど、「答えを作る人」より「答えを判断する人」の価値が高くなります。
実務ポイント:
このニュースを見て「AIでコンサルタントの仕事がなくなる」と考えるのは、少し早いと思います。
いま起きているのは、人が1時間働くこと自体に価値がある時代から、AIを使ってどれだけ成果を出せるかで評価される時代への移行ではないでしょうか。
これは大企業だけの話ではありません。
中小企業でも、「AIを導入するかどうか」ではなく、「AIを使う前提で、仕事のやり方をどう作り直すか」を考える段階に入っていると思います。
我が事務所は絶賛作り直し中です。
3. 利するマッチング(商材・人材・M&A)
このコーナーの案件は、Webの掲示板にまとめています。最新の案件と成約・終了の状況は マッチング掲示板 をご覧ください。
4. 利する相談事例(Q&Aコーナー)
寄せられた相談事例を匿名で紹介し、解決のヒントを共有します。
このメールに対する質問や相談、叱咤激励などのご意見などは以下のフォームからお願いします。次回以降のこのメールにて答えられる範囲で回答いたします。
4-1 今週作ったアプリ
紙の通帳が、そのまま会計ソフトの明細になるまで
ネットバンキングを使っていない顧問先は、いまも少なくありません。
特に信用組合や信用金庫の口座は、紙の通帳のコピーやスキャンをいただいて、スタッフが1行ずつ会計ソフトに打ち込むことになります。
日付、摘要、金額を見ながらの転記で、地味ですが時間がかかり、打ち間違いも起きる作業です。
そこで、先週ご紹介した「証憑ゲートウェイ」の中に、通帳を読む機能を作りました。
流れはこうです。
通帳をスキャンしたPDFをアップロードすると、AIが1行ずつ、日付・摘要・出金・入金・残高を読み取ります。
次に、プログラムが全行について「前の残高 − 出金 + 入金 = 今の残高」を計算します。
1行でも合わなければ、その行だけ赤くなり、人が原本を見て直します。
全行が一致したら、マネーフォワード会計に「明細」として直接送ります。
CSVを作って画面から取り込む、という手順もなくなりました。
ある顧問先の通帳で本番に流してみました。
1冊目は2ページ・45行で、残高の検算は45行すべて一致、人が直す行はゼロ。
残りの2冊も含めて、7月以降の明細をすべてマネーフォワードに送りました。
別の銀行の通帳(3ページ・72行)でも試したところ、繰越行を除く71行すべてで残高が一致しました。
同じ通帳を2回読ませても、金額と残高は2回とも完全に同じ。揺れたのは摘要のカナが少し違う程度です。
かかった時間は1冊90秒ほど、AIの費用は1冊70円ほどでした。
明細になった後は、以前ご紹介した記帳のAIが仕訳の案を作ります。
今回の通帳では、ルール表で決まったものと、AIが自信を持って判断したものがまず仕訳になり、判断がつかないものは担当スタッフに質問を回しました。
借入金の返済は、返済予定表をもとに元本と利息の2行に分けています。
スタッフの回答はルール表に書き足すので、来月からは同じ取引が自動で決まります。
結果、3冊とも7月以降の明細はすべて自動的に仕訳になりました。
4-2 弥生会計からマネーフォワードへの移行を、アストラとClaudeの2人がかりで
いま事務所では、顧問先の会計ソフトを全てクラウド会計に統一すべく、主にマネーフォワード会計に移行する作業を進めています。
会計事務所の記帳代行プランに加入することで、定額で無制限に会社を扱えるためです。
会社によってはfreeeを提案する場合もあります。
対象は100社以上。そのうち弥生会計が一番多く、しかも移すのは今期だけでなく過去の年度もすべてです。
移行そのものは単純な作業の繰り返しです。
弥生から仕訳日記帳・残高試算表・消費税集計表を年度ごとに書き出し、マネーフォワードに勘定科目、開始残高、仕訳の順に取り込み、次の年度に繰り越す。
ただ、1社で5年分あれば同じ操作を5回。これを100社以上やるとなると、とても人手では回りません。
ここで登場するのが、先週ご紹介したChatGPTの「アストラ」です。
弥生会計はパソコンにインストールするソフトで、外からデータを取り出す仕組み(API)がありません。
これまでは人が画面を開いて1つずつ書き出すしかなかった部分を、アストラに弥生の画面を操作させて、年度ごとの書き出しをやってもらいました。
マネーフォワード側は、Claude Codeの担当です。
ブラウザを操作して、取り込み画面を最後まで進め、次の年度への繰り越しまで行います。
取り込みが終わったら、マネーフォワードのデータをAPIで読み、弥生の数字と突き合わせます。
突き合わせは6つです。
貸借の一致、貸借対照表の全科目、損益計算書の全科目、当期純利益、前の年度末と今年度の期首のつながり、そして消費税の課税売上高・課税仕入高。
1円でも合わなければ、次の年度には進みません。
今日は、ある個人事業主の顧問先の5年分を、この流れで人の操作なしに最後まで通しました。
別の法人でも5期分を移し、どの期も6つすべて差額ゼロでした。
途中で一年度だけ、全部が一致しなかった年度が出てきました。
インボイスの経過措置で「仕入税額の8割だけ控除する」と弥生に登録してあった仕訳が、マネーフォワードに移ると「全額控除」に変わっていました。
その年度は18行・6,056円。控除できないはずの2割分が経費から消え、仮払消費税に入っていたのです。
画面上はエラーもなく、取り込みは「成功」と表示されます。
消費税の集計まで突き合わせていたから、気づけました。
今は取り込む前に経過措置の行を数えて警告し、取り込んだ後に個別に8割控除へ直しています。
もう一つ、細かい話ですが、8割控除の税額の端数を、弥生は四捨五入、マネーフォワードは切り捨てで計算していて、1円ずれる行もありました。
ここは設定を変えずに、理由を摘要に書いた1円の調整行で合わせています。
役割分担をまとめると、こうなります。
- アドレス作成と事業所作成は、人
- インストール型のソフト(弥生)の操作は、アストラ(Computer Use)
- ブラウザの操作とデータの突き合わせは、Claude
- どこまで合えば次に進むかのルールを決めるのと、合わないときの判断は、人
先週の号で「税務ソフトまでAIが操作してくれる時代」と書きましたが、1週間で実際の業務に組み込めました。
AIの進化が早すぎて、文字どおり朝令暮改の世界線で仕事しています。
5. 編集後記(食事、睡眠、運動など)
会社の経営数値と社長の健康数値。社長が管理すべき二大数値です。
自分自身の実践も含めて、短く共有していきます。
先日血液検査を始めとした各種検査をしてきました。
一応結果は概ね良好。血圧も正常。Inbody測定も良好。
まずは結果だけが送られてきましたが詳しい解説がないとよくわからないですね。
来週詳細なカウンセリングをもらいに行ってきます。
定期的に検査をして健康の現在地を把握しておこうと思います。
それでは良い週末を。
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